こんにちは、はえおーです。
餌用ホソワラジムシの繁殖を始めてから早半年以上が経過しました。
最近では初期に比べて繁殖が安定した事もあり、ヤフオク!でも定期的な出品が出来るようになってきました。
その影響もあってか、たまにワラジムシに関するご質問・ご相談を受ける事があります。
色々なご相談を受けるのですが、中でも意外?と多かった内容がこちらです。
ホソワラジムシを自家繁殖していたのですが、何故か途中で全滅してしまいます。原因が不明なのですが、何か思い当たる要因をご存じないでしょうか?
というもの。
他にも、”途中まではうまく増えていたが、ある日を境にパッタリ増えなくなった”というのや、”全滅まではいかないものの、大半が突然死した”といった内容の、原因不明の斃死に関するご相談がありました。
私は今までそういった状況に直面した経験が無く、またその知識も持ち合わせていない為にこれまでまともに返答出来ずにいました。
しかしこの謎の大量死については個人的にも気になる所でしたので、自身の飼育環境とも照らし合わせ”何が原因と成り得るのか?”自分なりに色々調べた上での考察を書いてみようと思います。
ワラジムシの斃死に少なからずご興味ある方はどうぞお付き合い下さい。
本記事は推測による考察記事であり、実証実験などを行ったわけではありません。参考程度に「そんな可能性もあるかも?」位にご覧頂ければ幸いです。
またここで言うワラジムシとは主に”ホソワラジムシ”を指します。
ワラジムシの主な死因
まず一般的にワラジムシが死ぬとされる代表的な要因を見ていきたいと思います。
ワラジムシが死ぬ理由として考えられる主な死因は次の2つのようです。
- 湿度不足による乾燥
- カルシウム不足等の栄養不良
特に①の湿度不足はワラジムシの主な死因として最も多く挙げられているようです。
それぞれ少しだけ掘り下げてみたいと思います。
湿度不足
一般的にワラジムシは乾燥に弱いとされています。
自然下のワラジムシを観察しようと探す時、乾燥地帯で見かける事はほぼありません。
大抵は湿った場所の石や木の葉の下なんかに潜んでいる事がほとんどです。
ワラジムシは体表に水分を運ぶ細い溝があるらしく、体表に付いた空気中の水分をその溝を通して必要な部位に供給し全体の水分量を調節しているんだとか。
またワラジムシに向かって息を吹きかけるとすごい勢いでその場から逃げだしますが、これは風によって生活空間やワラジムシ自身が乾燥する事から避ける為なんだそうです。
この事からもワラジムシが湿度の高い環境を必要している事は確実だと言えます。
湿度の足りてない乾燥した環境は、ワラジムシにとって必要な水分の供給が止まる為に死活問題となるのでしょう。
では逆に湿度過多の環境ではどうなのか?
一般的には高湿度状態もワラジムシには良くないとされているようですが、飼育下で観察している限りではあまり大きな影響はないように思えます。
腐葉土の水分により飼育ケージの壁面に水滴が付くほどの高湿度状態になった事が何回かありますが、それによって何か問題が起きた事はこれまで一度もありません。
ただし、高湿度下はワラジムシそのものというよりも飼育環境に悪影響を及ぼす可能性があり、高湿度状態があまり良くないとされる主な理由はこちらとされているようです。
栄養不良
ワラジムシは甲殻類に分類され、”外骨格には多くの炭酸カルシウムを含む”とされています。
その為かワラジムシは栄養素として多くのCaを要求するようで、飼育下でも通常の餌の他にカルシウム粉末に群がる様子を何度も確認しています。
良く食べるとされるテトラフィン等の熱帯魚用配合飼料には原材料にフィッシュミール(魚粉)が含まれる事が多い為、少なからずCaを補給している事になります。
しかし画像の様に配合飼料よりもCa粉末を優先して群がる様子もこれまで何度も確認している事から、もしかするとテトラフィン等では必要なCa分を十分吸収出来ていないのかもしれません。
思うに、”一般的に紹介されているような飼育イメージよりもワラジムシはCaの要求量がかなり高いのではないか”と思います。
必要な栄養が足りてない状態が続くと成長に悪影響が出てくる事が予想されます。
特に成長に伴い繰り返される脱皮には多くのエネルギーが消費される為、十分な栄養分を身体に蓄えた状態で無いと脱皮に失敗(脱皮不全)してしまい、そうなった不全個体はその後高確率で死んでしまうそうです。
栄養バランスに優れた配合飼料ならまだしも、余った野菜クズのみだけを与えていたりすると十分起き得る事だと思われます。
以上の2つがネット情報などでよく聞かれる主な死因になります。
先にも述べましたが乾燥による斃死は特に目にする情報であり、ワラジムシの死因のほとんどは湿度不足が原因とも言われているようです。
つまり湿度と餌をしっかりと管理出来てさえすれば、ワラジムシが大量に死ぬような事は起きないように思えます。
しかし今回自分に相談されてきた方は皆一様に、”ケージ内は一定の湿度を常に保っており餌も栄養価の高い餌をしっかり与えていた”という事でした。
なのに何故、死んでしまうのか?
これについては自分でもネット情報や飼育書等を色々漁ってみましたが、これといった明確な要因を見つける事は出来ませんでした。
ただ情報を追いかけていく中で、もしかしてこういった事も死因に起用してるんじゃないか?と思う部分がありましたので、それを考察を交えながらご紹介したいと思います。
土壌生物と微生物
そもそもワラジムシは森林などで落ち葉や朽ち木、虫の死骸などの有機物を食べる分解者で、そういった役割を担う生物を総称して「土壌生物」と呼ばれています。
他にもミミズやヤスデ、トビムシ類やダニ類などもこの土壌生物に含まれています。
これら土壌生物が食べ分解した有機物をさらにそれよりも小さい土壌中の微生物(細菌、糸状菌、藻類など)が様々な物質・栄養素に分解し、それを植物が吸収していく事で森林サイクルは成り立っていると言われています。
また土壌生物と微生物は密接した関係にあるようで、様々な相互作用があるそうです。
ワラジムシなんかは体内に共生している細菌が居るそうで、その菌は宿主であるワラジムシの栄養が不足していると栄養分を供給したりするそうです。
逆にワラジムシは有機物を食し細かくする事で、微生物の活動単位面積を増やしたり糞に含まれる窒素分などの栄養が微生物の活動をより促進させているとされてます。
またワラジムシの糞には強い防カビ作用のある物質が含まれているようで、その物質を作り出しているのが微生物だという事まで判明しており、さらにその微生物の存在がワラジムシのような節足動物にとって害になる細菌の繁殖を抑えている可能性もあるんだとか。
細菌とは違いますが「イリドウィルス」のようなワラジムシ(ダンゴムシ)にとって有害なウィルスも存在します。
そういった害になる存在から微生物達が結果的にワラジムシを守っているのかもしれません。
このようにワラジムシと微生物は深い共存関係にあり、互いに助け合って生きています。
しかしこの相互作用のバランスが何かしらの理由により崩れてしまうとどうなるのか?
そんな時にワラジムシの大量死が起きるのではないでしょうか?
ではどんな時にバランスが崩れてしまうのか、考えられる原因を探してみました。
炭素率(C/N比)
炭素率とは土壌中に含まれている炭素(C)と窒素(N)の比率の事を指します。
この炭素率はC/N比とも呼ばれており、肥料有機物や土壌中の炭素量を窒素量で割る事でその比率を計算したものになります。
C/N比が高ければ高いほど炭素が多く含まれているという事になり、逆に低ければ炭素が少ないという事になります。
このC/N比の比率は微生物の活動に大きな影響を及ぼすとされ、農業や家庭菜園などで重要な土壌作りの指標にもなっており、おおよその比率が20~30程度が丁度良いとされるようです。
上記の土壌をワラジムシ飼育に置き換えると、土壌=床材です。
よくワラジムシ飼育の床材に使用される腐葉土は、原材料にも左右されますが大体20~50位だそうです。
販売されている腐葉土にはC/N比が表記されている物も多いです。
微生物にとって炭素(C)は活動する為のエネルギー源になり、窒素(N)は増殖する為のタンパク源になるとされています。
微生物は炭素(C)の大部分をエネルギー源として消費するそうですが窒素(N)はそれ程でもないようで、窒素分の多い有機物を餌とした際には余分な窒素は排出するそうです。
つまり微生物が活動して有機物を分解すればするほど、炭素はどんどん減っていきC/N比は下がっていく事になります。
床材である腐葉土をワラジムシが食べ分解し、さらにそれを微生物が分解していけば最終的に炭素はほぼ無くなる事となり、炭素をエネルギー源とする微生物の活動も衰えていきます。
恐らくそれは、前述したワラジムシと共生関係にある微生物達もまた同じではないかと思います。
また弱った微生物が死滅すると微生物に取り込まれていた窒素分はアンモニアに変化するそうで、ワラジムシにとっては有害といえます。
床材に落ち葉や腐葉土を追加したり周期的に床材を取り換える事は、”C/N比を正常に保つ=微生物に正常に機能してもらう”という意味で必要な事なのかもしれません。
以上、「ワラジムシが突然死してしまう原因の考察」となります。
非常に曖昧な結論ですが”土壌生物であるワラジムシは良くも悪くも微生物の影響を大きく受けているのではないか”というのが現時点での考えです。
今回は”炭素率(C/N比)”に注目しましたが、その他にも「微生物の拮抗作用」や「土壌のPh」等々、微生物に関わる作用は数多く存在するようです。
土壌生物であるワラジムシと微生物にはまだまだ未知な関係性があるような気がします。
今回の考察がワラジムシの斃死に繋がってるかどうかは不明です。
冒頭でも述べましたが、あくまで今回は考察のみであり検証をした訳ではありません。
何度も申し上げますが、「ふ~ん、こんな視点もあんのか」程度に見て頂けたらと思います!
では、また。
コメント